絶叫脱出ゲーム③~クラスカースト~
それはあたしも例外ではなかった。


クラス内の事情は知っていたけれど、だからといってなにか行動に起こすような事もしてこなかった。


「なんだよみんな、酒本と正木が死んだんだぜ? もっと喜べよ!」


「そうだよ。あたしはこれでもうトイレの水を飲まなくていいんだから」


「だよな。俺も顔面にゲロかけられなくてすむ」


最後にそう言ったのは山口君だった。


あたしは驚いて山口君を見た。


確かに彼はイジメられっ子の1人だった。


だけど、今みんなが言っているようなひどいイジメがあったなんて、知らなかった。


「酒本は名前の通り酒癖が悪かったからな」


中尾君が言う。


「だよね。あたし真夜中にあいつの家に呼ばれて御酌させられた事があるよ」


「あぁ、あいつ酔っぱらうと必ず俺らを呼び出してたもんな」


「一度断った時にビール瓶で頭ぶんなぐられた」


彼らの話を聞いていると背筋がゾクゾクと寒くなるのがわかった。


それだけのイジメを、クラスの誰にも知られないように行っていたという事実が恐ろしくなった。


まるで<mother>みたいだ。
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