CLUSH HONEY~V系彼氏と、蜜より甘く~

「……キリトは、私たちだけのキリトなんだから……」

「……あなたみたいなのが、キリトといていいわけないでしょ……」


投げかけられる言葉に、耐えられなくなって、じりじりと後ずさる。


「……行ってよ? 帰って…とっとと!」

「キリトのそばになんか、いないでっ!」

「……早くっ! 消えてよ……!」


浴びせられる罵声に、その場から思わず逃げ出した。


背中に、

「もう、来ないでよ!」

「キリトの前に、現れないで!」

「邪魔なんだから…オバサン!」

容赦のない言葉が、笑い声とともに飛んで、私は駆け出した。


夜遅くなって、キリトから連絡が入った。

だけど、私は、電話に出ることができなかった。

彼女たちが言ったように、自分はキリトにふさわしくないと思えた。

募って、止められなくもなっている彼への気持ちに、もうこの辺でけりを付けなければいけないようにも感じていた。


彼は、人気絶頂のアーティストで、私はその彼より年齢が5つも上の、

彼には似つかわしくなんかない、ただ普通の女だった。


彼女たちの言うように、私は彼のそばにいるべきじゃない……。

膨らんだその思いは、もはや消せなくなって、

私はそれっきり彼からの連絡には、一切出ることができなくなった……。



< 131 / 156 >

この作品をシェア

pagetop