黒胡椒もお砂糖も


 慌てて振り向くと、高田さんはちらりと一瞬こちらを見て、また淡々と言う。

「・・・そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」

 ぐっと詰まってしまった。

 ・・・怖がってねーし!一応反論してみたけど、心の中で言ってる辺り完全にのまれている。

「俺がお腹空いたんです。すみませんが、少しだけ寄り道いいですか?」

「・・・はい」

 もう車降りれないし、はっきり言って私に選択権ないじゃん・・・。どうにでもして。私は更に諦めモードを醸し出しながら助手席に身を沈める。

 だけど、高田さんが言った「少しだけ寄り道」は本当に、少しだけ寄り道、だった。

 車をそのままファストフードのドライブスルーに突っ込んだのだ。

 ――――――――あれ?

 私は驚いた。

 だって、資金も潤っている(に違いない)エリート営業で、普通の男性でも格好つけそうな状況下(女性連れ、しかも彼の言うところの惚れている女性)なのに、まさかドライブスルーはないでしょ、と思って。

「高田さん?あの・・・」

 私があらあらと思っているうちに、彼は注文を済ませてしまう。何か要りますか?と聞かれたから首を振ると、自分の分だけ(でも大量に)注文していた。

 え?ってことは運転しながら食べるつもりなのかしら・・・。うわあ、それは流石に申し訳ないでしょ。私が運転してるんならともかく。


< 147 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop