黒胡椒もお砂糖も


「――――――尾崎さん」

「へ!?はいっ!?」

 また声が裏返ってしまう。もう、これだけでも何とかならないものか!10代の片思い女子じゃないっつーの!

 フロントガラス越しの景色をじっと見詰めたままで、高田さんは静かな声で言う。

「物凄く頑張って俺を避けてますけど、実際のところ、迷惑ですか?」

「・・・」

 直球ですね、これまた。うお~!どう答えたらよいのだ!!頭を抱えたかったけど、さすがにそんな格好悪いことは出来ずに、私は助手席でただ固まる。

 外の風景から目を離して彼がこちらを向く。静かな両目と視線が合ってしまって、うろたえた。

 め、め、迷惑と言えば迷惑だけど・・・いやでも何かされたわけではないし・・・うううーん!そういう意味で言えば強引な平林さんの方が迷惑だし!

 無言のままでアレコレ忙しく考えていたら、また声が飛んできた。

「俺が嫌いですか?」

 ぶっ・・・。

 噴出しそうになって咳き込む。どうして言葉をオブラートに包むってことが出来ないのよこの人~!!

「・・・いやあ・・・その、別に、嫌いとかでは・・・」

 ゴニョゴニョと返す。これは本当だ。だって、嫌えるほどあなたのこと知らないし。挙動不審になるし無駄に鼓動が激しくなるからあんまり近寄らないで欲しいけど、別に彼本人が嫌いなわけではないんだし。

 でも彼にはそれで十分だったらしい。表情を少しだけ緩めて笑顔のようなものを作る。

「じゃあ望みはあると思っていいんですね」

 うっ・・・。また私は固まる。そう聞かれると、物凄く困る!困るのだー!!


< 152 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop