臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「ありがとう。まぁ、早いとは思っていたがな。あの宝石商、取引先の一つだから。返しは用意してたものを言っているんだろう?」

「言われた通りに。私は社長の秘書です、とただそれだけですけど」

「それでいい。下手に否定や肯定をするとややこしいからな。後は勝手に向こうで判断するなり解釈してくれる」

書類に目を通しながら社長は呟いて、それから顔を上げた。


「うん。なかなか似合うじゃないか」

社長が満足そうに見ているのは私のスーツ姿だ。

あの日ショップで勝手に買い求められて、勝手に店員さんに選ばれて、日曜日になんと家に配達された数十着のスーツ。

何事かとは思ったけど……もう、いろいろと諦めていたからタンスにしまい込むことはせずに、ちゃんと月曜日には身に着けて出社したよ。


今日着ているのは、夏らしく明るいミントグリーンのスーツ。

身体のラインにフィットしているけれど、女性らしさと実用性とをうまい具合にバランスを保ったような、とても清楚な装いになっている。

さすが高級店だと感心していたけど、このスーツじゃさすがにいつものずぼらメイクでは合わなくって、いつもよりちょっと華やかなメイクもしてみた。
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