引越し先のお隣は。


高校3年生の夏。



…夏?



いや、9月。



ぼちぼち進路も決まりつつある時期に入った。



それぞれがみんな、違う道を歩こうとしている。



そんな雰囲気が少し寂しく思えた。



そしてあたしは県外に行く。



卒業して、みんなに会う確率も少なくなるけどもあたしには将来、したいことがあるから。



だから迷わないって決めたんだよね。



「では、今日から新しい単元に入っていきます。みなさんで丸読みをします」



「先生今日もかっこいいね〜」



「それ〜、癒される」



「若いって良いね」



「でも先生彼女いるんでしょ?」



「えー、そうなの??狙ってたのになー」



そんな声が後ろから聞こえた。



まあこの授業は毎回のことですか。



三浦 颯志(みうら そうし)先生。



それがあたし達生徒が今注目している先生。



あたし達が通っているこの高校は田舎町にあって、



先生達は40代から60代のおばちゃん先生とおじさん先生だけ。



ずっとそうだったのに、



今年初めて若い先生が来た。



まだ大学卒業仕立ての22歳の先生が、三浦先生を合わせて3人入った。



後の先生は2人とも女の先生でふたりともとっても可愛い。



そんな中、三浦先生も若いだけでは無かった。



「佐倉さん」



「は、はい!」



「『こんにちでは』から読んでください」



「あ、はいすみません…」



そうだった、今は丸読みの最中で…。



周りを見ればさくらちゃんと間宮くんがニヤニヤしてあたしを見てくる。



あたしは三浦先生が言った一文を読みあげた。



はぁ…たった一文読んだだけで…。



「顔あけぇ…」



斜め前の間宮くん。



「ほっといてよ」



そうなんです、あたし…赤面症でして…。



すぐに真っ赤になるんです。



「赤面症ってなおんねーの?」



「知らない」



「お前いつも俺に冷たいよな」



「別にそんなんじゃないよ」



ただ、さくらちゃんに不安にさせたくないんだ。



変な気持ち持たせたくないし。



「あっそ」



間宮くんは頭良さそうに見えて実は大バカ者。



さくらちゃんの気持ちに全然気づかなくて。



さくらちゃん分かりやすいし、顔によく出るのになぁ。



間宮くんは学年1のイケメンなんだって周りの女子みーんな言ってる。



すごくモテるみたい。



まあそうだよね。うん。



だけどさくらちゃんによれば、みんな断っているんだってさ。



間宮くんに告白しても女の子達はみんな、結果は分かってるからって



諦めがちの女の子が増え、そして注目は今や三浦先生となった。



だけど三浦先生は先生だから。



先生と生徒って…少女マンガじゃあるまいし世間的にだめでしょ。



あたしだって…高校生活、青春したかったのに。



ま、理想と現実は違いますよね。はい。



そんなこんなで国語の授業はあっという間に終わった。


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