Bitter Chocolate
31
ヒカリは惠佑と幸せになろうとしていた。

仕事上がりに一緒に食事したり、
映画を観たり
何度か恋人たちがするようなデートをした。

ヒカリは普通の独身の女の子に戻ったように楽しんだが
惠佑のことを愛してるとはまだ思えないままだった。

「次の金曜、ヒカリさんも休みだよね?」

「うん。」

「木曜の夜から出掛けない?
箱根に一泊で…ダメかな?」

一泊すると言うことは惠佑と同じ部屋に泊まるという意味だ。

ヒカリはまだ惠佑と一泊する心の準備が出来てない。

「え…?」

「客室露天風呂付きの部屋に一度泊まってみたくて。」

二人で一緒に入ろうって意味だろうかと
ヒカリは頭の中で色々考えた。

「ヒカリさん…まだダメかな?」

「うん?…あーどうかな?」

ヒカリはうまく答えられなくて
言葉を濁してばかりで
惠佑はそんなヒカリの気持ちがどこにあるのか不安になる。

「ヒカリ…」

惠佑はいきなり呼び捨てにしてヒカリを自分の方に向かせるとキスしてきた。

「そろそろヒカリが欲しいんだけど…」

ヒカリはそのキスを受け止めるのをまるで義務のように感じた。

いつまでも惠佑を待たせる訳にもいかない。

「うん…わかった。…箱根に行こう。」

惠佑は嬉しそうにもう一度ヒカリにキスをした。

ヒカリは何とも言えず複雑な気持ちで家に帰ってきた。

惠佑のことは好きだけど…
要に逢ってドキドキするようなあの気持ちとは全然違っているからだ。

家に帰ると電話がかかってきた。

ヒカリはかかってきた相手の名前を見てビックリした。

ビックリしてなかなか通話のボタンが押せない。

電話はなんと要からだった。

恐る恐るヒカリは通話ボタンを押した。

「もしもし…」

「ヒカリ…話がある。
少し逢えないか?」

「私には話すこと無いから…」

ヒカリは今、要に逢ってはいけない気がして
一方的に電話を切った。

しかし、要は何度も電話をかけてきた。

「ヒカリ…出てきてくれよ。
じゃないとそっちに行く。」

母や兄のいる家に来られたらヒカリは困る。

これ以上二人を心配させたくなかった。

「わかった。どこにいるの?」

「お前の家の近くの公園の駐車場にいる。」

ヒカリは何も持たずに公園に行き、
要のクルマが見えたので助手席に乗った。

「話って何?」

要はヒカリに逢うなりいきなり抱きしめてきた。

「やっぱりお前じゃなきゃダメなんだ。」

ヒカリはその一言で身体の力が抜けてしまったように
要に抱きしめられた身体をどうすることも出来なかった。

要はヒカリにキスしてきた。

ヒカリはさっき惠佑としたキスとは全然違ってる事に気がついた。

逢ってしまうとその衝動を抑えられなくなる。

要は何度もキスをして
ヒカリの身体に触れてくる。

辺りは人も居なくてヒカリはもう車の中でも躊躇わなかった。

ただ要と繋がりたかった。

狭い車の中で要と愛し合う。

羞恥心とか理性とかはなくて
本能と快楽を求める激しさがヒカリを支配する。

初めて逢った時のように
ヒカリは何も考えられずただ要を求めた。

「ヒカリ…お前は俺のモノだ。
どこへもいかせない。」

要はヒカリにそう言って
まるで奪うみたいにヒカリを抱いた。

ヒカリは要に抱かれて自分の想いを知ってしまい、
涙が自然と溢れてきた。



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