嘘を吐けない彼女のために
自分自身も分かっている。
学校の勉強が出来ることがマイナスになることはないということも。
だけど、それ以上にユウのような他人に寄り添う能力が秀でていた方が、人生の中でよっぽど価値あることだということも。
「…………お前、太るぞ」
口から出るは憎まれ口。
だけど、きっとそれはユウの懐の深さに甘えているからこそ生じる憎まれ口……でもあるはずだ。
「んー、最高! ガリガリの男より魅力あるんじゃね?」
そう言って、ユウはユウで、俺に向けてニヤリと笑う。
畜生、アイツ。俺が、ガリガリなこと気にしてると気づいて言ってるな。
「……勝手に言ってろ。てか、黙って食え」
「へーい、そうしまーす」
「言った先から喋ってるし……」
俺の言葉を嬉々とした表情で投げ返すユウを見て思うはひとつ。
たぶん、コイツには一生敵わないんだろうな。
そして……。
きっと、天瀬にも。
そんなことが過ぎる頭を無理やり振るい、思いを切り替えるべく奮闘する。
悪あがきだと分かっていても。
無駄なことだと知っていても。
それでも、ただ手をこまねいているだけではいられない。そんなジレンマの嵐も、確かに心の中でふきすさんでいた。