ハッピーエンドなんていらない

１.

「紫苑ちゃんふっかーつ！」

思い切り両手を広げた紫苑が、勢い良く湊へと抱きついた。


退院したのが金曜日で、月曜日から学校に通えることになった紫苑を、ちょうどみんなで迎えに来ていた。

まさかそんな勢い良く飛び出してくるとは誰も思っていないわけで、さすがの湊もなんとか紫苑を受け止めた、といった感じだ。


行動が明らかに“病み上がり”ではない気がする。

もう少しおとなしくしていてもいいような気もするが、まあ紫苑らしい。


「紫苑、体調の方は大丈夫なの？」

一応わたしが問いかけると、紫苑はドヤ顔で親指を立てた。

「大丈夫！すごい元気！」

…テンションが高すぎて逆に心配だが、まあ本人が言うのだし大丈夫なのだろう。

というか、大丈夫ということにしておこう。


「じゃあ、学校遅れるといけないしそろそろ行こうか」

湊が紫苑の髪をなでながら、ふわりと微笑んでみせた。

「そうだな」

雪もそれに対して微笑み返す。