ハッピーエンドなんていらない



朝ご飯は予想通り、食べ損ねた昨日の夕ご飯だった。

レンジで温めてから、みんなよりも少し早くご飯を食べる。

みんな食べる時間はバラバラなんだけど、いつもはわたしより先に兄が食べるのだが、今日はわたしの方が先だ。

なんせやることがないのだから。


「あれ、彩芽早いな」

私服を身にまとった兄が、ふわあとあくびをしながら話しかけてきた。

そんな兄にまあねと笑いかけて、食べ終わった食器を片す。


…なんとなく、どんな反応するのかななんて。


「お兄ちゃん」

そっと、ご飯を食べようとしている兄を呼んでみた。


ん?とご飯を口に運びながら振り返る兄。

そんな兄にニコリと笑いかけて、恥ずかしげに頬をかいて。


「実はさ、彼氏ができたんだけど」

未だに実感のない事実を口にしてみる。

そういうことを声に出すのは意外と緊張するもので、思ったよりも恥ずかしい。


兄は驚きすぎてかゴホゴホとむせていた。

…そんなに、驚くことないじゃん。

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