私、今から詐欺師になります
 あんな愉快な生き物を誰が手放すものか。

 最初に見たときの清廉な美少女から、憎めない小動物へと自分の中の茅野のイメージは変わってしまったが、愛していることには変わりない。

 だから、穂積が茅野に惹かれるのはわかる気がする、と思った。

 あの男もまた、自分と同じような孤独を抱えているように見えるから。

 ……あのオカマもな、と玲を思い浮かべた。

 あの男も、なんのトラウマもなく、あんな格好をしていたわけではないだろうし。

 そんなことを考えていたとき、ちょうど省吾がやってきた。

「省吾、今日は此処で切り上げよう」
と言うと、

「そうですか。
 早いですね」
と言ってくる。

「たまにはお前も早く帰れ」

「え。
 ありがとうございます」
と頭を下げてくる省吾に、にやりと笑い、

「最近、いい呑み友だちも出来たようだからな」
と笑ってやると、ぎくりとした顔をする。
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