私、今から詐欺師になります
 




「茅野、風呂は……」

 まだだろう? と風呂から出た秀行は言いかけ、ソファで爆睡している妻に気づいた。

 なに疲れてんだ、こいつ。
 もしや、本当に働いてるのか?

 一体、何処で?

 やはり、実家か?

 コンビニやファミレスがこんなの雇ってくれるわけないしな。

 重さで手が震えて、客の頭に熱々のハンバーグをかけたりしそうだ。

 図書館の仕事も重労働だが。

 本を並べるのもきつそうだった茅野に力のいる仕事が出来るとも思えないのだが。

 しかし、なんだかわからないが、満足げに寝ている妻の顔は可愛らしくもある。

「……しょうのない奴だな」
と茅野を抱き上げた。

 そのままベッドに運んでやる。

 布団をかけてやり、あどけない顔で眠っている茅野の額にキスをする。

「おやすみ、茅野。
 愛してるよ」

 ……この俺から逃げられると思うなよ、と微笑み、妻を見下ろした。





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