声の主
消せぬ過去と現実

ふと目覚めると私はものすごく汚れた女だったことに気づいて。
いや、思い出さざるを得なくて。
突如身体中がかゆくなる。
掻いても掻いてもかゆくて、まるで無数の虫が自分の上を這っているみたいで。
何回シャワーを浴びてもそれは拭えなくて落ちなくて。
膝に頭をうずめて、嗚咽に苦しむ。
泣く以外に、私に残された手段はない。
もう、こんな人生捨てたい。
消えちゃいたい。
なんだか、私に関わってくれてる全ての人に申し訳ない。
縫い針で腕を少し刺すと、それは快感に変わっていた。
もう、いいよね?
「俺のために生きて」。
再び目を開けた時には、もうゴツゴツした大きな腕の中にいて。
私は一瞬でそれが声の主だとわかる。
言葉にできていないありがとうが、溢れるのだ。
あと、ちょっとだけ頑張ってみる。
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