Leila -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅱ-



「この国で最も政の中枢にいる女だわ。この国で、最も民の関心を集める、最も人目に触れる、最も影響力の大きい女だわ。違う?」



 リーラの言葉に、レグナムは「違いません」とだけ答える。


――迫力に押されて、それしか言えなかった。



「女だとか男だとか、そんなもの関係なく、能力のある者が等しく機会を与えられる。それが陛下の目指す世の、一つの目標でしょう?」



「はい、姫殿下」



「ならばそこへの一歩目を――女が政の舞台に立つという一歩目を踏み出すのは、わたくしであるべきだわ」



 リーラが――王妃であるリーラが、政から遠ざけられたままでいれば、この国の他の女が、アルザの掲げる男女の別など関係ない世の到来を、信じることなどできるだろうか。



「わたくしはあのひとの妻よ。わたくしがあのひとの夢の一歩目にならずに、他の誰がなると言うの」



 堂々と啖呵を切った姫を、レグナムは唖然として見つめた。




< 53 / 64 >

この作品をシェア

pagetop