サガシモノ
夏休み
風が強く吹いていた。


今夜は嵐になりそうだ。


校舎裏にそびえる山は唸り声を上げて木々の葉を揺らしている。


真っ暗な空から我慢しきれなかったように雨粒が落ちて来た。


一粒、ふた粒。


あとは数える暇もなく、バケツの水をひっくり返したような大雨になった。


周囲の音は遮られ、雨粒が地面に叩きつけられる音だけが絶え間なく聞こえて来る。


そんな中校舎の二階に人影があった。


生徒たちはとうに帰った遅い時間。


人影はゆっくり、ゆっくりと左右に揺れていた。


ギッ……ギッ……。


古い木造校舎の柱にロープをくくりつけ、首を吊っている一人の少年。


ギョロリと見開かれた白目はすでにどこも見ていない。


垂れ下がった体に力はなく、廊下には糞尿が広がっていた。


彼がここにいるという微かなキシム音さえも、雨音がかき消していたのだった。
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