サガシモノ
腕時計
五十嵐孝がトイレから出たところで映像は消えた。


ハッと我に返るあたしたち。


しばらくの間トイレの入り口で茫然と立ち尽くしてしまった。


「は、早く探さなきゃ」


そんな渚の声でようやく体が動き始めた。


探し物は腕時計で間違いなさそうだ。


「なにが宝探しだ、ふざけやがって!」


海はそう言い、壁を力いっぱい蹴った。


「やめなよ海」


渚がしかめっ面をしてそう言う。


「なんだよお前あんな映像見てなんとも思わねぇのかよ」


「思うけど、でも、どうしようもないじゃん……」


渚の声は弱弱しく消えて行く。


昼間見たアルバムを思い出していた。


飯田アキラは16歳の時に亡くなっている。
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