サガシモノ
見た
広い和室の部屋に通されて、大きなテーブルには人数分の麦茶が用意されていた。


冷房は使っていないけれど、部屋のあちこちが開け放たれているためとても涼しく感じられた。


さっきから電話が鳴っているが、武田陽太は真剣にあたしたちの話を聞き、一度も席を立とうとはしなかった。


「確かに、俺たちはアキラの腕時計を盗んだ」


すべてを話し終えた後、武田陽太は重々しい口調でそう言った。


昔を思い出すように目を閉じて、その眉間に深いシワを寄せる。


「ひどい事をしたと、今でも反省しているよ」


「その腕時計は今どこにあるんですか?」


陽が聞く。


武田陽太は目を開け、そして左右に首を振った。


「わからないんだ」


「飯田アキラから盗んだ腕時計は更に誰かに盗まれたんですよね?」


あたしはそう聞いた。


武田陽太は大きく頷く。


「その通り」


「本当なんだろうな?」


海が今にも食って掛かりそうな勢いでそう聞いた。


武田陽太と松田邦夫が嘘をついているかもしれないと、睨んだのだ。
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