サガシモノ
どこにもない
「腕時計は俺は持っていない」


ソファに身を戻し、水原先生はそう言った。


「え……?」


「嘘つくなよ!!」


唖然とするあたしの代わりに海が怒鳴った。


「本当だ。俺が郁美から盗んだ後、すぐにまた盗まれた」


「絶対に嘘だ!!」


陽も眉を吊り上げて抗議する。


「よく考えてみろよ。時間が戻せる時計を手に入れたら、教師なんてとっくにやめてるだろうが」


そう言われて、あたしたちは言葉を失った。


確かにそうだ。


水原先生は借金があった。


それなら、時計を手に入れて真っ先に考えるのはお金を稼ぐ方法だ。


勝敗を予想する賭け事で大金を手に入れることは簡単なはずだ。


「それじゃぁ、腕時計は一体どこに……」


「知らないね」


フンッと鼻を鳴らす水原先生。
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