サガシモノ
最後の夜
そしてまた夜が来ていた。


お父さんに車で旧校舎まで連れ着てもらうと、いつもと違う雰囲気がそこにはあった。


あたしたち以外に、水原先生、武田陽太、松田邦夫、そしてもう1人、見慣れない男性の姿があった。


「咲紀、こっち!」


あたしに気が付いた渚が手を振った。


小走りにみんなの元へ行くと、見知らぬ男性と視線がぶつかった。


男性は強面な顔をしていて、頬に大きなケガの痕がある。


思わず後ずさりをしてしまう。


「はじまして、五十嵐孝です」


見た目とは反対に、丁寧に挨拶をして頭を下げる男性。


この人が五十嵐孝……!


学生時代の面影はなくなり、イカツイおじさんになっている。


「は、はじめまして。村上咲紀です」


緊張で思わず声が裏返ってしまった。
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