サガシモノ
先輩
栞の家を後にしたあたしたちは、ファミレスへ戻ってきていた。


一番窓際に座っているが、みんな何も言わなかった。


運ばれてきて時間がたった水は凍りが溶けて温くなり始めている。


「俺たちが、冗談半分で旧校舎になんか行ったからだ……」


呟くようにそう言ったのは陽だった。


変わり果てた栞の姿を見て一番ショックを受けているのは、きっと陽だろう。


「終った事を言っても仕方ないだろ」


海がガシガシと頭をかいてそういった。


「仕方ない? お前、それで終わらせるつもりか?」


陽が過剰に反応して海を睨み付ける。


「終らせるなんて言ってねぇだろ? 栞をあのままにできるわけがねぇ」


「でも、どうすればいいのかわからないよね……」


あたしは小さな声でそう呟いた。


2人会話をさせているといつか喧嘩に発展しそうだ。


「旧校舎に出た幽霊が言ってたよな? 『お前たちの大切なものを奪った! 返してほしければ俺たちの大切なものを探してくれ!』って……。


大切なものって、栞の事だったんじゃないか?」


健がそう言った。


瞬間、昨日聞いたあの声を思い出して全身に鳥肌が立った。


「返してほしければ俺たちの大切なものを探してくれ……ってことは、また旧校舎に行かなきゃいけないってこと?」


渚が青ざめた顔でそう言った。


「そういう事になるかもしれないな」


健は落ち着いた口調でそう返事をする。


しかし、その目は挙動不審に動きまわっていて、混乱しているのがよくわかった。


「うそだろ……」


海はしかめっ面をする。


「でも、それで栞が助かるなら行くしかない」


陽はすでに旧校舎へ行く覚悟をしている様子だ。
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