俺が彼女に会えない理由
過去
自分がコンプレックスに思っている部分を、もし誰かが褒めてくれたとしたら?
どれほど救われることだろう。

俺には人生で一度だけ、その経験がある。

そしてそれは、風花への信頼が芽生えた。二人の歴史の始まりだ。

1997年。5月。
小学五年生のときのことだった。

ある日、先生が「次の体験学習はみんなに能の体験をしてもらいます」と能の紹介を始めた。

そして、先生が能のお面の写真を黒板に貼ったとき、ある女子がすかさず言い放った。

「あっ!冬弥くんだ!」

< 80 / 239 >

この作品をシェア

pagetop