私に恋してくれますか?
タクシーが来るまでの間、私はトオルくんと庭に出る。

「ピーコのお母さんに釘を刺されちゃったな。
このままの俺じゃ、ダメだって。」とトオルくんは私の顔を見る。

「私もオトナになれって言われたようです。」と私は右手につけたピンキーリングに触った。


やっぱり、お母様はやり手だ。
私とお父様を和解させるように仕向け、
トオルくんにも、足立先生にも、
日野家の女主人のとしての意見を通した。


トオルくんは夜空を見上げながら、
「…おれさあ、
ピーコに相応しい男になりたいな。」と私の手を取る。

「わたしも、
両親に認められるようになりたいです。」と、夜空を見上げ、トオルくんの手を握り返した。


「こら、そこのコドモ、タクシー来たぞ。
今日は雛子ちゃんに触るなって言ったろ!」
と笑った声で足立先生が声をかけて、玄関に向かって行った。

「うるせーよ。ヤブ。」と言いながら、トオルくんは私の頭に唇をつけ、
「おやすみ、ピーコ。」と囁いた。

私はちょっと顔を赤くし、

「おやすみなさい。」とトオルくんを庭で見送った。

私はこれから大人になる。
そして、トオルくんと一緒にいられるようになる。

そう自分に言い聞かせ、
トオルくんと見上げたいくつも瞬く小さな星をもう一度見上げた。
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