うっせえよ!





「それで、あんた今、どこにいんの?」



「……強いて言うならゴミ収集車の中。」



「はあ?」



呆れたような明美の声と一緒に、受話器から「明美さん。おでこが痒いんじゃが……。」と声が聞こえた。



「佐藤さーん、男は我慢よ!」



と訳の分からないことを言ったかと思うと、「あ、そろそろ怪しまれるから切るわ。」とプツリ。ツーツーと虚しい音が私の右耳に響いた。



マーライオンこと、誠司さんは未だにうずくまっている。ミネラルウォーターを信用できないようで、猫のようにフニャーと威嚇している、28歳、上裸。



「わかりました。こうなったのも私の責任ですよね。看病します。それでいいですか?」



28歳、上裸の猫は首を傾げた。誠司さんもきっと昨日のことは覚えていないのだろう。



覚えてないのだから、そこまで親身になってやることもないのに。私はどこかこの男をもう少し詳しく知りたいと逆に好奇心のようなものが芽生えていた。




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