あかすぎる、恋に。



私は何もかかっていない質素な壁紙を
じっと見つめる。


誰もいないのに。


誰も知らないのに。

私がここまで考えていることを誰も
知らないと思っていたのに。


なのに遼真は知っていた。



知っていて、それでいて私のこと
心配してくれて。


その事実がありがたくて。

だから私は、もう心配かけたくないんだ。

『無理しないように頑張るから』


その言葉に嘘はない。
心配かけないで頑張ればきっと誰も
困らないだろう。

『何かあったら言ってくださいね』


その言葉は昨日、唄鳥君が言っていた言葉だ。

・・・・・唄鳥君も心配してくれていたのだろうか。


遼真も、きっとそうなんだろう。
不器用な彼が不器用に伝えた、頼れという言葉。








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