恋なんていたしません!
「田ノ下さん、先に帰っていいですよ」

ゴミ出しに戻ってきたばかりの彼女に声をかけると、
「はい、わかりました。

ではお先に失礼します。

お疲れ様でした」

会釈をするように丁寧に頭を下げた後、田ノ下さんはその場から立ち去った。

「はい、お疲れ様」

小柄な後ろ姿に向かって声をかけた。

さて、少なくなっているトレイを出したらわたしも帰りますか。

そう思っていたら、
「野々村さん、まだ時間ありますか?」

そう声をかけてきたのは塩干部の伊勢谷さんである。

「えっ…ああ、はい」

何よ、こんな時に。

心の中で毒を吐きながらわたしは返事をした。
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