恋なんていたしません!
一ノ瀬はドアに手をかけた状態で、珍しいものでも見るような目でわたしを見ていた。

スーパーマーケットの閉店時間は20時だ。

しまった、タイミングが悪かった!

まさか、一ノ瀬と鉢あわせてしまうとは…!

「ええ、そうですよ。

お疲れ様でした」

一番くじで当たった戦利品を抱えてニヤニヤと笑っているこの光景は、自分で言うのもあれだがシュールである。

でもそんなことはどうでもいい。

「はい、お疲れ様です」

一ノ瀬がそう返事したことを確認すると、わたしはスッと彼の横を通り過ぎた。

――何か問題ありますか?

そんな空気を躰全体で出しながら、ドアノブにカギを入れるとササッと家の中に入ったのだった。
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