私のいとおしい残念な男達

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「あら、珍しい人がいらっしゃいましたねぇ」



総務部の受付カウンターから呼び出された岬舞子が、呼び出した黒木を見てそう口にした


舞子を呼び出しておきながら、後ろで働く総務部の一人一人をその高い視点から見渡している


「なに? 仕事の話じゃないなら小夏絡み?」


「…………まあな」

その目付き、喧嘩でも売りにでも来たのか?


「江口って奴、どれ?」

「江口さん? あー江口さんねぇ……何、桐生君にでも聞いた?」


「で………どいつだ?」


舞子が部署の方に視線を向ける
そして、その視線は江口さんのいる割と近くのデスクで止まる


「あの新人の女の子のパソコン指導している、紺色のスーツに趣味の悪いネクタイした人が江口さんよ」


「なるほど、あいつか……」


黒木の切れ長の瞳が江口さんを捕らえ、鋭く睨みつける


「…………っ」


その物々しい雰囲気に気づいた江口さん
一瞬チラリと黒木を見て、すぐに視線を逸らした

「サンキュー、分かった」


そう言って、総務部を出て行った黒木


「ふぅん……」

出て行く黒木の背中を見送りながら、口角をあげる舞子

「……岬さん、今の誰?」


その舞子に恐る恐る近づいて、問い掛けてきた
のは、黒木にいま思い切りガンつけられた江口さん


「彼ですか?あれは七瀬小夏の番犬です」


「七瀬の………番犬?」

首を傾げる江口さんに舞子が目を細める


「ええ、かなりの狂暴ですから気をつけて下さいね。少し前に小夏に手を出そうとした彼女の部署の先輩を殴り倒して辞職させましたから」


「殴り………っ」

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