消せない想い
いつものこと

1



マンションのエントランスで、お隣の後藤さんに会った。

「おかえりなさい、舞桜ちゃん」
「あ…こんばんは」

おかえりなさい、に返すうまい言葉がわからなくて、何だかとんちんかんな会話になってしまった。

「どう?学校は」

郵便受けからチラシを取り出してエレベーターに向かうと、待っていたのか後藤さんが前にいた。

「えーっと、」

首をかしげて促すように微笑まれる。

「楽しいです」

って!こんなのまるでバカみたいじゃん、わたし!

「あら、そう。楽しいなら良かったわ」

後藤さんは笑顔でそう言ってくれた。
< 20 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop