哭く花
一歩


鳥の鳴くような声が意識を繋ぎ止める。

遠くから聞こえる機械音。

ふと目を開くと、隣には熟睡する先生の姿。

時計は家を出る時間から既に30分過ぎていた。

「きゃあああ!起きて先生!!」

私の声は外に漏れるくらい大きく部屋に響いた。

寝ぼけ眼の先生も、ばっ!!っと謎の声を上げると、

「美岬、乗せてくから着替えろ」

とパジャマを脱ぎつつ叫んだ。

目の前で堂々とパジャマを脱ぐ先生に、

私がまた小さな叫び声を上げると、

先生もまた慌てて、ごめん!!とベッドルームを出ていってしまった。

私は先生より少し早く着替えると、

ベッドルームをでて、

冷蔵庫に入れていた二人分のお弁当を保冷バッグにつめた。

歯磨きをしながらネクタイを結ぶ先生のところに行って、

私も同じように歯を磨く。

なんだかこうしてると、本当の家族みたい。

ふふ、と笑みがこぼれる。

先生はそんな私を見て一瞬驚くと、

うはは、と豪快に笑った。

そんなこんなで家を出たのは、予定の1時間後。

「安心しろ、間に合う分には間に合う。」

「うん、気をつけて急いで!」

私たちの間には、何かしらの気まずさも、

壁も、薄く、低くなって消えかけていた。





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