記憶の中の彼
Fragments of Memory
 

わたしが駆けつけたとき、そこはすでに燃えさかる炎の中に飲み込まれていた。

 
事が起こったのは夜中の1時ごろだったと思う。
 
わたしは悲鳴のようなサイレンの音に目を覚ました。ごく近くで鳴っているようだった。
 
何やら人の叫び声も聞こえてきた。
 
それは14年の人生において未だ経験したことのない異常事態であることは明らかであった。

父と母も弾かれたかのように寝室から出てきた。
 
「火事、すぐ近くみたい」

母はそう言ってすぐさま弟の部屋に駆け込み、起こしにかかった。

出てきた弟は眠そうにふて腐れていたが、やはり尋常でない音にはっとしたようだった。

わたしたち家族は父を先頭として1階に下りた。

わたしは突然何か見えない糸に引っぱられるような、そんな感覚を覚え家から飛び出した。
 
 
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