Time after time たとえ何度忘れても ・・・
オレが病室に戻ってしばらくすると、弥生が目を覚ました。
「おはよう。よく眠れた?」
「あ・・・・・おはようございます。・・・確か、幼馴染の方、ですよね・・・・?」
起き上がりながら尋ねた弥生。
一瞬、ほんの一瞬だけ、記憶が戻ったのだろうかと淡い期待を抱くも、すぐにそのよそよそしい態度に否定されてしまう。
寝起きのいい弥生は、オレに気をかけながらも病衣の胸元を整えていた。
「そう。弥生には諒ちゃんって呼ばれてたけど。」
低く、オレがそう教えると、弥生は申し訳なさそうに目を伏せた。
「そうなんですね・・・・・」
弥生を追い詰めたり悲しませたりしたいわけじゃないのに、つい、そんなセリフを吐いてしまったのは、さっきの男のせいだと思った。
あの男はいったい弥生の何なのだ。
解けない疑問が、弥生のよそよそしい態度と相乗して、オレの気持ちが焦ってしまった。
―――――――――――――ダメだ。これでは弥生を怖がらせるだけだ。
そう感じたオレは、今度は少し明るく話しかけた。
「だから、なるべくそう呼んでくれる?なんか弥生に ”高安さん” なんて呼ばれたら、気持ち悪くなりそうだから。生まれた時から一緒にいて、そんな風に呼ばれたことないんだよ。」
すると弥生は戸惑いを残しつつも、クス、と、ささやかに笑ってくれた。
たったそれだけのことなのに、オレは、この数ヶ月で一番の幸せに遭遇した気分になった。
オレは弥生と違い明るい性格というわけでもないのだが、今の弥生と接する時は無理やりにでも明るく振る舞った方がよさそうだ。
そうしたら、また弥生が笑ってくれると思ったから・・・・・