町はずれの映画館
1.
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 西の空、沈みかかっている太陽。その最後の陽が、体育館の屋根を枯れ葉色に見せる時刻。

 いわゆるそれは黄昏れ時。なんとなくセンチメルな気分になる。

 そんな教室の片隅で、自称『怖いもの好き』の沙織はニヤリと笑った。


「ねぇ、知ってる? A町の外れにある映画館」


 微かに肩を竦め、美奈は小首を傾げる。


「A町の外れって、いつも準備中の映画館じゃない?」

 美奈は記憶の中を探っりながら呟き、沙織がポッキーを差し出してきたので、それを一本とって口に入れた。

「営業してるかどうかも怪しいって、そんな噂なら知ってるけど」

 A町には二つの映画館がある。

 一つは、町の商業施設内にある映画館。

 最新作や3D映画などの新しいものは、ほとんどこの映画館で見れる。

 加えて、最近改築された広いシアターは、新しいもの好きの若者にかなりの評判を呼んでいた。

 立地的に駅前からさほど遠くもなく、買い物にも便利なのも人気を誘う要因なのだろう。


 片や、町外れにある映画館の歴史は古い。

 街中からバスを乗り継いで20分。昔は栄えたのかも知れないが、人足の途絶えた商店街の向こうに、その映画館はあった。

 薄汚れた黄色い外壁。お洒落さのかけらもない、シンプルな入口。

 亡くなった祖母の家が近所にあったので、美奈は何度か外観だけを見たことがあった。

 古臭い映画館はいつも締まっていたが、何故か外に貼られたポスターだけが新しくなって、どこか不思議なそんな空間を作り出していたような記憶もある。


「それがね、毎月28日の夜だけ、営業しているんだって」

「毎月28日?」

 だいたいの映画館の映画の日は毎月1日。

 サービスデーなどはどこも曜日で決まっているのに、28日と決めたのは何故だろう。

 不思議に思いながらもニヤニヤとしている沙織には、まだ話の続きがあるようだった。



「しかも、21時34分から上映されるらしいんだけど」

「うん」

「行かない?」

「はぁ?」

 21時半からの上映と言えば、レイトショーである。

 この地域の映画館では、18歳以下の入場が禁止されている時刻だ。

 間違いなく、高校生の彼女たちだけでは門前払いされるだろう。


「保護者いるし」

「保護者?」

「うちの兄貴」

 ニヤニヤとしている沙織に、美奈は何故か背筋を伸ばした。
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