徒花と蝶
枯れた華は二度と




それからは葵も無言だった。
でも葵が私の歩幅に合わせてくれていて、二人並んで歩いた。

家に着くと、



「お帰り」



母が玄関先で出迎えてくれた。
『花楓、ありがとう』と言って味噌と豆腐の入った袋を受け取る。

自転車を片付けに行こうとする葵を、母は止めた。



「何?」
「奈々【なな】ちゃんが来てるわよ」



私の知らない名前がお母さんの口から出てきた。
お母さんのその言葉に、『奈々が?』と言って葵が居間に急いで行った。

その奈々ちゃんが、葵の彼女なんだろうと言うことは簡単だったけれど、彼氏の家に本人がいないのに来るほど親密な関係であることに驚いた。



「葵の彼女、よく来るの?」
「今はそんなにだけど、高校のときは花楓が東京に行ってからは週1ペースで来てたわね」



それは家族ぐるみの付き合いと言っても過言ではなかった。



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