徒花と蝶
その花に蝶が止まるとき




それから私はファミレスから逃げて来た。
母が乗っているだろう車に、駆け込む。

私が突然乗り込んできたことにとても驚いたのであろう母は良く分からない叫びにもなっていない声を上げたけれど、私は後部座席でうずくまった。

母の『どうかしたの?』と言う声にも、反応はしなかった。

私のその様子に、母は静かに車を出した。


…そして、当初の予定どおり、近くのビジネスホテルに入った。



「家に帰って良かったのに」
「いいのよ、男共にはお灸を据えてやらないと女心が分からないのよ」



…少なくとも葵は分かっているから彼女ができたのだと思うのだけれど。

そうとは思いながらも、『そうだね』とだけ返事をしてホテルの中に入った。



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