徒花と蝶







「…好きでいてくれて、ありがとう」




私は、祐輔と同じ気持ちでないことを隠して、祐輔と一緒にいることはできない。

私に祐輔は幸せをくれたとしても、祐輔に私は、幸せをあげることはできないから。

祐輔が大切だから、友達以上だから、…許してほしい。


そう思いながら私は、祐輔に告げた。



「…祐輔の幸せを、祈ってる」



一見きれいな言葉のように聞こえて、とても残酷な言葉だ。

祐輔が望む未来を、私はあげることができないのに、そんな私が幸せを祈ると言うのだから。


共に在れないけれど、私は祈っている。

自分の幸せよりも、彼の幸せをずっと。


電話越しで彼は、『ありがとう』と言った。



< 80 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop