笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
あまりにもじっと見つめているものだから、不思議に思った私はそんな奏に声をかける。
「あの…似合ってないかな」
私の言葉を聞いた奏は、その瞬間、我に返ったように首を横に振った。
「いやごめん、実は」
奏はそれだけ言うと、隣の椅子に置いてあったカバンから小さな袋を取り出す。
「え…」
その袋は奏の手のひらにすっぽりと収まっていて、そこからはシャラン、と小さくて繊細な音が聞こえた。
まさか、と、私はその袋を見つめる。