笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
ドアにそっと手を伸ばして、力を入れた。
またね、奏――
「依美っ」
その途端に。
頭の中で整理しきれないことが、一瞬で起こって。
驚きのあまり、固まってしまった。
「え…」
私の手は、ドアにはもう触れていなかった。
私の手に触れたのはドアなんかではなくて、温かくて、でも少し冷たい――
奏の手だった。
「依美、行くな」
今までに聞いたことのない、奏の声。
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