笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「俺がたまたま通らなかったら、倒れてたぞ」
奏は笑ったまま、今度は両手で私の肩を掴む。
まるで、倒れないようにと固定してくれたみたいで。
そのすべては今日も、優しさで溢れていた。
私は奏の顔を見ることができなくて、ただ床へと視線を落とす。
だけど、奏が私を見ているのが分かる。
その視線に気がついてしまった私は、ゆっくりと――顔を上げた。
目が合って、奏が笑う。
何かを伝えたくて、伝えようとして。