笑顔を持たない少女と涙を持たない少年


奏が恋する人は、見た目も中身も、もっと素敵な――


「依美」


その、奏の声で。


いつから考えていたか分からないその感情を、私はそっと胸の奥にしまった。


――醜くて、小さな嫉妬、だったかもしれない。


「お前、今日ぼーっとしすぎだよ」


奏は笑うと、立ちあがる。


きっと今日も、紅茶の準備をしてくれるのだろう。


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