笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
ピタッとしたワンピースは、身体のラインがよく分かるくらいタイトで。
持っていたカバンからは、煙草の箱が一箱、床に落ちて、その煙草は床に置き去りにされたままだった。
爽やかとは正反対の彼女のキツイ香水の香りが、そこに残る。
――私が見る限りでは、相当、若いお母さんだった。
私は何も言うことができなくて、ただ黙ってしまう。
驚いた。
お母さん、奏の、お母さん――
奏は、もう一度私の方を振り返って、笑う。
「悪ぃな、びっくりしただろ」
――奏はいつも、こんな思いを。