笑顔を持たない少女と涙を持たない少年
「依美、早く」
奏はその言葉を無視して私の腕を掴むと、そのまま私をソファから立ち上がらせる。
だけど。
私はここから引けなかった。
分からない、どうして引けないのかなんて。
だけど。
意地でもここから離れたくない、それだけは確かに感じていた。
「はじめまして依美といいます、奏くんのお友達です」
奏のことが大切で、奏のことが好きだという想いが、ただ私の背中を押している気がする。