今宵、君と月の中で。

・大切な時間


*****


クロへの気持ちを自覚してから二日が過ぎ、七月も二週間が終わろうとしていた。


一学期は残り一週間ほどで、それまでずっと午前中しか授業がないことは嬉しかったし、夏休み目前のこの時期は毎年心が弾んでいたけど……。


「ちーちゃん、元気ないね。なにかあった?」


今の私は、仲良くなったばかりの中野さんにもバレてしまうくらい沈んだ顔をしていて、朝からため息が止まらなかった。


「ううん」と否定したけど、それが嘘だというのは見え見えだっただろうし、堀田さんも怪訝そうにしている。


ただ、ため息の原因は最近話すようになったばかりのふたりに打ち明けられるようなことではないから、笑顔でごまかすしかなかった。


「ちーちゃん、無理してない? 中ちゃんの言う通り、元気ないじゃん」


「本当になんでもないの。ちょっと寝不足で」


「……そっか。でもさ、もしなにかあったら聞くからね。私たち、もう友達なんだし」


「うん、遠慮しないでね」


笑顔を見せた堀田さんに、中野さんも共感するように頷いた。


まともに話すようになってまだたったの二日なのに、“友達”と言ってもらえることがくすぐったい。


だけど、本当に嬉しくて、今度は自然と素直な笑みが零れていた。

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