今宵、君と月の中で。
四限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、途端にクラスメイトたちの気が抜けたような声が飛び交い始めた。


「起立、礼」


日直の女子の声に合わせて、生徒と先生が一斉に一礼をした。


そのまま転がるようにして教室を飛び出して行く男子たちを横目に着席すると、国語の教科書を片付ける。


代わりに取り出した数学の問題集と机の上に置いてあるペンケースを持ち、スクールバッグから財布だけを出して教室を後にした。


同学年の生徒たちで賑わう廊下を進み、階段を降りる。


そこには一年生と二年生の教室が並んでいて、さらに階段を降りて着いた一階の校舎を抜けて別棟に移動した。


この校舎の二階には体育館があり、一階の奥には柔道場と剣道場、その手前に食堂がある。


雨の日は、普段は外で食べている生徒たちもやって来るせいかいつもよりも食堂が混んでいて、ひとりで過ごすことに慣れていてもほんの少しだけ居心地が悪い。


タイミングが悪ければ席を取るのも一苦労で、注文だって結構並ばなければ順番が回って来ない。


小雨が降る今日も予想通りの状況で、食堂の隅にある購買でメロンパンとうちの学校の名物である“からむす”を調達し、すぐにたくさんの生徒たちで賑わっている食堂を出た。

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