今宵、君と月の中で。
梅雨だというのに今日はよく晴れた一日で、薄い雲が漂う空には月と星が光っていた。


昨夜は満月だったけど、今日はほんの少しだけ欠けている。


大都会ではないにしても、生活に困らない程度の街並みであるこの辺りで見る夜空は特別綺麗なこともなくて、ほとんどの星はあまり目立たない。


月だけが煌々と輝いている夜空から視線を落とすと、自然とため息が零れた。


公園までは、徒歩で五分も掛からない。


ただ、私の目的は公園ではなく、その先にあるコンビニでシャーペンの芯を買うこと。


なくなりそうなそれを明日の朝に買い忘れないように、今夜のうちに買っておこうと思っているだけ。


まるで自分自身に言い聞かせるように小さく頷いたあと、木に囲われた公園が見えてきたことでなんだかソワソワしてしまって、できるだけ右側を視界に入れないようにしながら歩いていた。


一体、私はなにがしたいのだろう。


心の中で問い掛けたことに対する答えが出ることはなく、それなのに踵を返すことのない自分自身の行動が理解できないけど……。


視線の先に見えた公園の前にあの男性が立っていることに気づいて、さらに足早になっていく。


「あっ」


そして、明るい声が耳に届いた時、心臓が跳ねた。

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