今宵、君と月の中で。
絶妙な塩加減の白米と、手のひらサイズほどのおにぎりの中心を陣取る唐揚げは、今日も美味しくてあっという間に完食してしまい、僅かに残していた緑茶を飲み干した。


食べ始めてから十五分弱の間に強まった風のせいで、さっきよりもコンクリートの濡れている部分が近づいて来ている。


食べている間に濡れなくてよかったと考えながら立ち上がり、階段を上り切って三階の廊下に置かれているゴミ箱にゴミを捨て、そのすぐ前にある図書室に入った。


図書室には司書の先生と数人の生徒がいたけど、まだ席はたくさん空いている。


いつものように無言で笑顔を向けて来た先生に会釈をし、カウンターの前を通り過ぎて誰もいない長机の隅に腰掛けた。


昼休みは残り二十分ほどしかないけど、頑張れば宿題として出された量の半分くらいは片付けられるだろう。


以前は苦手意識があった数学だけど、今は得意だと思えるようになったし、開いた問題集にザッと目を通した限りでは得意な問題が多いような気がする。


問一の文章を読んでシャーペンを走らせ始めると、あっという間に集中できた。


静かな図書室で向き合う宿題は自分でも満足できるほどよく捗り、昼休みが終了する五分前に予鈴が鳴った時には予定通りの量をこなせていた。

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