ホワイト・ライ―本当のこと、言っていい?

ユリカモメを見に行くのには尚人くんや真央ちゃんも誘うのかなって思ったけど、シゲにそういう様子はなかった。


二人で上野公園って中学の時みたいで懐かしいと思いつつ、私の気持ちとしてはどうしてもデート気分なので、何を着て行こうかかなり悩んだりしてみた。


純がいればいつも洋服選びにアドバイスをくれるんだけど、今回はそんなこと頼めるわけもない。



いつも通り上野公園に入ってすぐの西洋美術館で待ち合わせて、一緒に動物園がある奥まで行くことにする。


美術館の企画展は混んでいたから、常設展を少し回ってから歩いてすぐの動物園に向かう。入口付近のゾウやバクを眺めながら、坂道をゆっくり歩いて西園へ降りていく。こっちにはキリンがいるんだ。


時々立ち止まってスケッチして、お互いに見せ合ったりした。「うまくなったよなぁ」と上から目線で褒められて、やっぱりデートって感じじゃなくて美術部っぽいけど、それでもいいや。


今日一日一緒にすごしたら言ってみようかな、私の気持ち。 二人で出かけるチャンスなんて、この先なさそうだから。




玉砕したら気持ちを切り替えて、純にもちゃんと「振られたよ」って言って相談に乗ればいい。嘘をつかないでうまくやる方法、一緒に考えてあげよう。


万が一うまく行ったら? そしたら元彼の純にはあまり会えなくなっちゃう? 今だって会おうとしてくれないけど。それに、シゲに嘘つくなってまた言われたら、どうするんだろう私。純のことは言えない。




考えてみると、普通に振られたほうが皆がうまく行く気がする。シゲと真央ちゃんもまた隣同士になったんだから、ほっといてもやがてうまく行くんだろう。


そう気づいたら、またやる気がなくなった。とりあえず今日は楽しもうかな。
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