天使か悪魔か

「私は…そんなの知らなかったわよ!」


「それなら私だって!
この女がやろうって言っただけで私は悪くない!

実行犯もそいつらだし!」

「おいおい!
俺らに罪なすりつけるのか?
お前らの命令だろ!」


言い合いを始めている。
地位や権力が高い者を前にすると人間は欲に埋もれ醜くなる。


友達や仲間なんて必要な時にいればそれでいい。
どうせ裏切っても関係ない。
赤の他人なんだから。
自分が1番可愛い。

それが人間だ。


「誰がやったとか関係ねーよ。
お前ら全員の罪だ。

処分は明日言い渡す。」


さっきまでとは違い冷たく、ただ淡々と言い放つ桜吏。
普段からは想像できない。


桜吏は私をお姫様抱っこして歩きだす。


「あ、桜吏ずるいぞ!
俺がかっこよく愛を抱っこしてあげたかったのに!」


いつも通りの明るい空の言葉が聞こえて少しホッとする。

元に戻ったんだ



「今はそんな事言っている場合じゃないでしょ。

愛は俺が運ぶから、空は家に、美華は理事長に報告しておいて。」


流石桜吏。
テキパキと指示を出している。


「愛、もう少し待っててね」

いつもの優しい桜吏の声を聞いて安心したのか、私は目をゆっくりと瞑った。



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