愛寵メルへン
オニキスの後に続いて歩く。

そこで改めて自分の服装を確認すると赤ずきんを被っていることがわかった。

赤ずきんと言えば赤ずきんを被った女の子が病気のおばあさんのお見舞いに行き、寄り道をしたせいでオオカミに食べられてしまうお話で有名だ。

「ねえ、オニキス危ないってどういうこと?」 

赤ずきんの話では寄り道をしてはいけない、と言われていたくらいで森が危ないなんていうことは無かったはず。

「ノアは赤ずきんだからだ。」
「え?」
「この森では赤ずきんが狙われる。
昔、赤ずきんのせいでこの森のオオカミが殺されたんだ。それを根に持った先祖達は赤ずきんを被った人を見つける度に無差別に襲うようになった。」

あの話に続きがあったんだ…

「ノアは赤ずきんについてどれだけ知ってる?」
「私は…」

よく読んでいた童話の内容をオニキスに話す。

すると、オニキスは驚いた声を上げて立ち止まり、振り向いた。

「…それ、本当に赤ずきんなのか?」
「どういうこと?私の世界では赤ずきんっていうお話は本になっていて、今話したのはその本の話だよ。」

驚きを隠せないのか、オニキスの目は見開かれている。

「俺の知ってる赤ずきんはそんな話じゃない…」

オニキスによると赤ずきんはおばあさんのお見舞いに行くまでの過程は同じらしい。違うのはそこから。
赤ずきんはおばあさんに成りすましたオオカミに服を脱ぐように言われ、全て脱いだあと、服はかまどにくべてしまう。それからオオカミと同じベットに横たわり、そこで襲われたらしい。

私の知っている赤ずきんとは全く違う話だ。

「だから危ないっていってるんだ。
この辺りは赤ずきんをよく思わないオオカミたちがたくさんいるからな。…とりあえず、先を急ごう。」

オニキスは言葉にできず固まっている私の手を取る。

「俺の家ならここよりは安心だと思うから。」

ぶっきらぼうにそう言い放ってから再び歩き出した。
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