イジワル御曹司のギャップに参ってます!
第七章 全てを失くした私の手を握っていてくれるのは
***


呼び出しに応じてやってきた会議室で。
午前の鋭い日差しが作り上げた影を背に纏って、小野田部長が窓際に立っていた。

「朱石くん、説明してくれ」

発せられた第一声は、今までにない剣幕で、私を怯えさせるには十分だった。


「お呼びでしょうか、小野田部長」

私の到着からワンテンポ遅れて、氷川が会議室に入ってくる。

「少々まずいことになった」

小野田部長はそれだけ答えて、再び私へ厳しい視線を戻す。

「今朝、『ジュエルコスメ』の社長から直々にクレームの連絡があった。
『おたくの会社は、我が社を星宝Liliaに売り飛ばそうとしているのか』と。
一体どういうことなんだ、朱石くん。何故こんなことになったのか、説明してくれ」

説明も、何も。
私にもさっぱり分からなくて、答えようがない。
『売り飛ばす』とは――何をどうしたらそんな話になってしまうのか。

返答に困り言葉を詰まらせていると、もう一度、ガチャリと会議室のドアが開かれる音がした。


「お待たせしました小野田さーん。事実確認してきましたよー」

ちょっと軽い言葉尻で、『星宝Lilia』営業担当、若部さんが会議室に入ってきた。
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