イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「待ってください!」

慌ただしく過ぎ去ろうとする私たちを呼び止めたのは、青山さんだった。
今さっきコピーでも取っていたのだろう、A4の用紙の束を抱えながら、血相を変えてやってくる。

「氷川さん、眼鏡は!?」

眼鏡を外して『流星』となった氷川の様子に、青山さんは酷く驚いているようだった。
蒼白になりながら、流星の元へ追いすがる。

そんな青山さんへ、流星はにっこりと微笑みかけた。

「捨てた」

「捨てたって……」

「いらないんだ。もう」

そう答えた流星に、青山さんの表情は世界の終幕を見たかのように絶望に呑まれる。

そんな彼女にも構わず、流星は身を翻した。「行くよ!」

「は、はい!」


呆然と立ちつくす青山さんを置いて、私と流星はオフィスを飛び出した。
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